近年、不動産業界にテクノロジーで取り組む不動産テック企業が多数存在します。
そんな不動産テック企業のうちGAtechnologiesとLIFULLに注目して両社の損益計算書(PL)を比較しながら、事業に迫っていきたいと思います。
企業紹介
まずは扱う2社を紹介します。


まとめると...

会計クイズ
では早速ですが以下の損益計算書(PL)のうち、どちらがLIFULLでしょうか?

正解


解説
では早速このようにPLが大きく異なる理由をビジネスモデルを交えながら解説していきます。

不動産業界
まずは不動産業界がかかえる問題を見てみましょう。
不動産業界は、情報の非対称性やDXの遅れを抱えていますが、IT化により多くの企業が課題に取り組んでいます。
情報の非対称性とは、売り手の情報量と買い手の情報量に差が生じることで、買い手が不利な立場に置かれることです。
また、不動産業界は伝統的に紙の手続きなども多くDX化が遅れています。

解説:LIFULL
企業紹介でも説明したようにLIFULLは住宅事業である、HOME’S関連事業をメイン事業としています。

ではLIFULLのビジネスモデルを見てみましょう。
有価証券報告書の事業系統図には以下のように紹介されています。

まとめると以下のようになります。
つまりLIFULLは物件情報サイトを提供するのみです。
お金もユーザからはもらわず、クライアントである不動産仲介会社からもらうのみです。

まとめると在庫を持たないLIFULLは、掲載料が売上高となり、原価はサイトの運用費などが当たります。

ちなみに、賃貸のサイトを分類すると以下の3種類になります。
自社物件サイトは、不動産仲介会社などが自社が契約する物件を紹介します。
不動産ポータルサイトは、様々な不動産会社から情報を集めます。
2次掲載サイトは不動産ポータルサイトの情報を集めます。サイト側は不動産会社とやり取りしません。

賃貸サイトについては「31社の賃貸サイトを一覧で比較!あなたにオススメの選び方と使い方」という記事が参考になります。
LIFULLの解説の最後に、競合と言えるリクルートが運営するsuumoとの比較を行います。
住宅セグメントでの売上高や物件掲載数でもLIFULLをsuumoが上回っています。
売上高についても関連領域を含むと考えられるので、一概にサイトの比較はできませんがsuumoが一歩先を行っている印象ですね。

解説:GAtechnologies
つづいてGAtechnologiesの解説を行います。
GAtechnologiesはマーケットプレイス事業が主力事業です。

マーケットプレイス事業は投資用の物件サイトだけでなく、賃貸のサイトや投資物件管理ツールなど近接領域の多くのサービスを展開しています。

GAtechnologiesのビジネスモデルは決算説明会資料では以下のように説明されています。

ビジネスモデルをまとめると以下のようになります。
ポイントはGAtechnologiesが不動産を一度買ってから販売していることです。

有価証券報告書からもGAtechnologiesが不動産の在庫を抱えていることがわかります。

つまりは在庫を抱えるので原価は物件の仕入れ値になります。

GAtechnologiesの強みはこの在庫を抱えることともいえるでしょう。
本来ならLIFULLと同じように物件の掲載のみを行う事業モデルも可能なはずですが、あえて在庫を抱えることで利益を増やしています。
そして在庫リスクをテクノロジーによって軽減しようという考えです。
在庫回転期間(棚卸資産回転期間)のデータからもその様子がうかがえます。
※ 棚卸資産回転期間 はこちらの解説記事【棚卸資産回転期間】在庫保有の効率性の測り方が参考になります。

GAtechnologiesの類似企業にはFIRST LOGICという投資用不動産サイト「楽待」があげられます。
こちらの企業は、在庫を抱えないLIFULLと同じビジネスモデルです。

まとめ
今回は在庫を抱える・抱えないという点に注目して2社を比較してきました。

最後に不動産テック業界の様々な企業を少しだけご紹介します。
業界の分け方には様々ありますが今回はToB,ToCに注目して分けてみました。
こちら以外にも不動産Tech企業は多数あり面白いビジネスに取り組んでいるので、調べてみてはいかがでしょうか?
